海外不動産投資は値上がり期待や減価償却効率の良さが理由で人気があります。しかし商習慣の違いなどによる失敗事例も少なくありません。特に物件の値上がりが期待できる新興国での不動産投資には注意すべき点が多くあります。
為替リスクを伴う失敗事例
欧米物件は円換金で為替損のリスクあり
欧米の不動産は築年数の経過による物件価値が下落しにくいのが特徴です。日本の不動産は築年数が経過すれば、ほとんど売却金額は購入時よりも低くなります。しかし欧米の不動産の場合、建物のメンテナンスがしっかりしているので価値が落ちにくく、値上がりするケースも少なくありません。
そこで値上がりを狙う不動産投資も可能ですが、問題は為替リスクです。購入時よりも円高が進行すれば、円換算では損失を生む可能性があります。たとえば1ドル=110円で50万米ドルの物件を購入するとします。この時点での購入金額は5,500万円です。
数年後に55万米ドルで売却できたとしても、1ドル=95円に円高進行していたら、55万米ドルは5,225万円にしかなりません。つまり物件自体は値上がりしていても、日本円に換算すると損失となってしまいます。
日本と海外の金利差に注意
2018年9月時点での日本の政策金利は0.10%となっています。対してアメリカは2.25%、EUは0.00%です。為替は金利が高い国の通貨が買われやすい傾向があり、2国間の金利差の変動によって為替も変動します。
2018年11月時点では1米ドル113円ほどで、アメリカの金利引き上げに伴って円安が進行しています。しかしアメリカは好景気を背景に金利引き上げを続けていますし、逆に日本はデフレが続くことで低金利政策を続けています。日本は金利引き上げの機会を伺っていますし、アメリカは景気後退が確認されると金利引き下げも予想できます。すると円高ドル安に傾く可能性があります。
欧米の物件を購入する際には、金利と為替の動向をチェックし、為替リスクを極力回避することが必要です。
コンドミニアム購入による失敗事例
購入したコンドミニアムが完成しない
経済成長が続く東南アジアの新興国は、不動産価格が上昇していることから世界の投資マネーが流入しています。しかし新興国の多くは外国人の土地購入を禁止し、コンドミニアムのみ購入できるようにしています。
そのコンドミニアムの取得方法として、プレビルド物件を購入するケースが多くみられます。プレビルド物件は建設前に売買契約を結び、建設の最中に購入代金を支払うというものです。一般的にプレビルド物件は建設するデベロッパーが、本来の売り出し価格よりも数割安く販売します。つまり完成時に売却するだけで、実質的に値上がり益を得られるスキームというわけです。
しかしデベロッパーは、このプレビルド販売で得たお金を建設費用にあてるため、販売不振となれば建設費用を調達できなくなります。そのために工事が止まったり、場合によっては完全に中止となったりすることで購入した物件が引き渡されないケースもあります。すでに支払ったお金をほとんど回収できないリスクもあるので注意が必要です。
対策としては、施工実績により信頼できるデベロッパーの物件を選ぶということが挙げられます。
ローンが組めずに支払ったお金すべてを失う
プレビルドのコンドミニアムを購入したら、頭金を複数回に分けて支払い最後に残金を一括で支払います。しかし施工前に購入するために担保価値の算出が難しく、融資限度額がどの程度になるのかが不明です。
そこで分割払いは現金で支払い、最後の支払いのみローンを組むという方法が多くとられています。ある程度の支払いは済ませているので、融資をひくだけの担保はとれるとデベロッパーから説明を受けることになります。
しかし、いざローンを申し込んでみると、物件の担保価値が高くないために想定した融資がおりないことがあります。ローンを組めずに残金の支払いができなければ、物件購入の権利を放棄して支払ったお金は違約金として没収されます。
このようなケースを回避するために、ある程度の現金が用意しておくことが必要です。
賃貸がつかない
新興国のコンドミニアムはほとんどが、賃借人は外国人となります。現地の人が借りるには家賃が高いのが理由です。
しかし新興国の不動産価格上昇により多くの海外マネーが流入することで、コンドミニアムも多く建設されています。それに対して外国人の駐在員などはそれほど急激に数が増えるわけではありません。その結果、賃貸の需給バランスが崩れて賃貸付けが難しくなるケースがあります。
投資家によっては値上がり益のみを見込んで現金で購入し、賃貸運用をしないこともあります。そのため新興国の不動産投資は、賃貸運用をせずとも収益が見込めるような資金計画を立てることが大事です。
まとめ
海外不動産投資は日本の場合とは異なる収益確保のスキームが必要になります。国ごとの経済状況や投資スタイルを勉強して、リスクを抑えた運用計画を立てることが大切です。