東京オリンピックはマンション経営にどのような影響を与えるのでしょうか。そのポイントとなるのは、人口の推移と賃貸マンションの需給バランスです。そのふたつのポイントから考察してみます。
東京都の人口は2025年をピークに減少に転じる
東京都の人口は増加し続けている
東京都の人口は1995年から増加を続けています。全国の人口は2015年の国税調査において、1920年の調査依頼初めて減少に転じ、日本は人口が減少すると予測されています。しかし東京都は、前回(2010年)の調査時における約1,316万人に対して、2015年の調査では約1,352万人と36万人ほど増加しています。
さらに2019年1月1日時点での推計は約1,385万人とさらに増加し、2018年の1年間で10万人ほど増えています。
東京都の人口が増える理由
マンション経営は賃貸需要が多い場所で行うことが大切です。その意味においては、東京都は魅力ある場所といえるでしょう。ただし利回りに関しては、物件価格の高騰や建設費用の高騰により低下傾向にあります。
ところでなぜ、東京都ではこのように人口が増えているのでしょうか。その理由は、転出者よりも転入者が多いことにあります。
日本では少子高齢化が顕著となっていますが、当然ながら東京都も例外ではありません。2012年から死亡数が出生数を上回り、自然減少に転じています。しかし、転入者が多いことから人口の総数は増加という現象が起きています。
ちなみに先進国は少子化により人口減少に向かう傾向がありますが、アメリカは移民が多いことで人口は増加し続けています。
なぜ東京都への転入者が多いかというと、圧倒的な経済力があるためです。就職口も多いですし、労働力が流入するために企業も東京都に集まっています。
さらに東京オリンピックの開催が決まり、インフラ整備やホテルなどの宿泊施設建設のために、労働力不足による人口流入が加速しました。
東京都の人口推移
https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/basic-plan/actionplan-for-2020/plan/pdf/honbun4_1.pdf
東京都の2019年1月時点の人口
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/01/29/25.html
オリンピック後には賃貸マンションの需給バランスが崩れることに
オリンピック後には物件過剰に
東京オリンピックの開催に向けて人口は増加を続け、マンション経営も問題ないように見えます。しかし、オリンピックが終わると状況は一変する可能性があります。
というのは、選手村となる場所の跡地には5,000戸以上のマンション建設が予定されているからです。それに対して建設工事が落ち着くことから、労働力が過剰となり人口が転出する可能性があります。
つまり、賃貸マンションの需給バランスが悪化する可能性が高いということです。
現在も投資家向けのマンション建設が続く
オリンピック後にはマンションも過剰状態になることが予測されるにもかかわらず、湾岸部のタワーマンションを中心に建設が進んでいます。これは不動産相場の上昇を見込んだ海外の投資家の購入需要があるからです。
もちろん投資家は購入したマンションを賃貸に出します。そのため、賃貸マンションの供給量がさらに増えることになります。需給バランスが崩れれば、空室率も上昇します。
世帯の構成変化にも注意が必要
単独世帯が増加傾向に
東京オリンピックが終わっても2025年にかけては、東京都は人口の増加が続くと予測されます。しかし、その世帯構成に目を向けると、課題も見えてきます。
出生率の低下や晩婚化などにより、東京都はもちろん全国的に単独世帯が増えています。東京都の場合には単独世帯は、2015年の669万世帯から2030年には708万世帯に増えるとの予測もあります。
それに対して子どもがいる世帯は減少しており、建設が進むタワーマンションなどはファミリー向けが多いことから、賃貸需要は今後減少することが考えられます。また単独世帯が増えるといっても、その内容を見ると単身者向けマンションのオーナーにとっては楽観視はできません。
高齢者の単独世帯が増加することに
単独世帯でも生産年齢人口は減少していることから、今後は高齢者の単独世帯が増えることが予測できます。高齢者には、シニア向けの住みやすい住居が必要になるので、従来の賃貸マンション需要としては高齢者は対象から外れることも考えられます。
また単独世帯の数そのものも、人口減少により2060年には約620万世帯まで減ると予測されます。以上の観点から、単身者用の賃貸マンションも東京オリンピックの後には需要が減少する可能性が高いことがわかります。
まとめ
日本の人口減少と高齢化により、今後は賃貸マンションの需要が減少することは容易に考えられます。一方でオリンピックを控えて人口流入が続く東京都の場合でも、世帯構造の変化や高齢化によって、オリンピック後のマンション経営には影響を及ぼすことがわかります。
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